美術部 絵馬 制作記
2024年12月27日 12時31分美術部で制作した絵馬を 先日 地元の三嶋神社さんに奉納させていただきました
今回は制作の様子などの報告です
昨年は 辰年の絵馬
暴れてしまったことを 悔やむ 龍( 川 )を
三嶋神社の祭神でもある「 菊理媛命」(くくりひめのみこと)が 慰める絵
野村の水害で亡くなった方々への 鎮魂の祈りを込めました
悲しみと いたわりと 祈り が表現できた会心の作で
これはもう 超えられないし
ある意味 超えてはいけないと思っています
さて 今回は 蛇(へび)
リアルに描いても不気味になるし
かといって 年賀状のようなものでは「野村」の高校生が描く意味が無い
部員みんなで いろいろアイデアを出し合いましたが
ダムの時と同様 なかなか方向性が見つかりません
描き始めるまで本当に苦労しました
原点に戻って「蛇」の象徴的意味から調べることに
脱皮を繰り返すことから「再生」
なかなか死なないことから「強い生命力」の意味もある
そこで今回は「水害からの再生」をテーマにします
まずは全体を色味を落とした赤で塗ります
今回もベースを金色にするので 下地の赤が効く
西洋の古典的な 箔押し技法 を参考にしています
原画を拡大コピーしたものを カーボン紙で写します
短期間で仕上げるために 「絵画」より 「デザイン」 的に描くので
シャープな線 と 塗りむらのない着彩 が重要です
まずは慎重に輪郭を描いて
一番面積の多い色 や工程の順番などを考えながら進めます
輪郭が決まったら ムラなく塗っていきます
今回初めて絵馬を制作する1年生2名
3回目で最後の3年生たち
体育祭の大きなパネルも制作した3年生は やはり 年季が違います
直線は マスキングテープ が使えるのですが
曲線は 手で描かなければいけません
手をプルプルいわせながら みんな頑張っています
部員ではないけれど M君も 友情制作してくれました
いつも静かな F さんを爆笑させてくれてありがとう
だんだん全体像が浮かび上がってきました
完成まであと少し
冬休み中なのに 補習が終わってから 夕方まで部活
この時期以外は きわめて「ホワイト」な 部活なのですが・・
一応全体を塗り終えたところ
いったん 離れて見て 変更箇所や修正箇所を考えます
一晩おいた方が見方が変わるので 今日はここまで
次の日
離れて見るとはっきりしなかった へびの輪郭を 少し太めに変更
髪の毛の色が 黒 だったので どうしても人の顔みたいで
へびではなく 「ろくろっ首」みたいに見えてしまいました
髪の色を なんとかしなければ
体の模様の色をちょっと暗くした色に 変更してみます
やはり変えて正解だったようです
不気味さがなくなって かわいいへびになりました
花柄模様も描き込んで桜にします
わずかな輪郭のゆがみなど
違和感を感じたところ を直して 気にならないようにします
ここからは違和感との戦い
自然に見えるためには 実は数多くの修正 が必要なのです
何か物足りない感じだったので
中央に 白い円 を描き足します
この円の中心は 画面の高さの黄金比の位置
赤い杯(さかずき)の形の意味 が伝わりやすくなったと思います
後述する「山の神 」との関係性も出てきました
繊細な文字の線はすべて 彼女の仕事
完全に任せきれる仕事師であります
全員で仕上げの細かい仕事を
細部の完成度が 全体の完成度を高めます
シトラスリボンの細い隙間を 慎重に塗る M君
今回は 着彩の前に ベニアにシェラックニスを塗って
サンドペーパーをかけて平滑にしているので
金を塗っても質感が違います
(そこまでやる意味があるのか あると思っています)
本日午後の 奉納に向けて ラストスパート
わずかな線のゆがみや 塗りむらを修正していきます
画面下部の 緑色の部分が物足りない感じ だったので
絵で表現している三柱の神様 の名前を金で書き加えます
箔入れペンを使うと 細くはっきり書けます
最後の仕事は 美術部以外でも大活躍の H さん
うまく箔の線が入りました さすがです
指の先は「石長比売」(イワナガヒメ )後述
午後からの奉納
宮司さんが到着されるまで 時間があったので
今までの先輩が描いた絵馬 を じっくり拝見
去年の龍の絵馬も いい感じに 古びが出てきました
「やっぱりかわいい」
「よくこんな細い線描いたなあ」
2年前のウサギの絵馬
原画を描いたHさんは この2年後(今年)ウサギクッキーのラベルもデザイン
(清水建設・国土交通省とのプロジェクトも 水面下で進行中)
描いたときは白木でしたが 色が濃くなって 絵がよりはっきりとしてきました
動物ふれあい部の看板にも使えそう
3年前の虎の絵馬
原画を担当したのは 有名な「るーちゃん」です
4年前の牛の絵馬
原画は Yさん 彼女も美大に進みました
「NEOのむら」でイラストを わかりやすく教えてくれてます
5年前のねずみの絵馬
なんとたくましいネズミではありませんか
6年前のイノシシの絵馬
細かくリアルな毛並や 折り鶴の描き込みに 脱帽です
これ以前の絵馬は 豪雨災害で全部流れてしまいました
なので 絵馬の数が 水害から何年経ったかということに
奉納に来る度に 水害のことを考えます
ここに来る途中の川も 護岸工事中でした
今回も愛媛新聞の記者さんから取材を受けました
寒かったので笑顔がこわばり気味?
元同窓会長の 宮司さんからも お褒めと感謝をいただきました
野村高校のすべての絵馬で ぐるっと神社を飾りたいとの熱い思い
ほんとうに ありがとうございます
無事に設置 奉納させていただきました
*絵馬下の名前等の表示は 撮影時はまだ昨年のものです
☆今回の絵馬についての解説
「へび」を どう表現するのか ずいぶん悩みましたが
脱皮を繰り返すへび には「再生」の象徴的意味もあることから
「野村の再生」を祈願する絵馬 にすることにしました
三嶋神社の祭神である「大山祗大神」(オオヤマヅミノカミ)は
○ 山の神である ( 野村らしい ) → 画面上部の山
○ 酒の神でもある( 野村らしい! ) → 画面中央の杯(さかずき)
大山祗大神 には二人の娘がおり
○「木花之佐久夜毘売」(コノハナノサクヤビ〔ヒ〕メ) → 左のへび(花柄)
○「石長比売」(イワナガヒメ ) → 右のへび(石柄)
「ニニギノミコト」が 美しいコノハナサクヤに一目惚れし
コノハナサクヤ の父である オオヤマヅミ に結婚の許可をもらいに行ったところ
「 姉のイワナガも一緒に差し上げましょう 」
ところが 不美人のイワナガ は 父の元に返されてしまいます
「イワナガも娶(めと)ることで ニニギの子孫は長寿が得られたのに 」
と オオヤマヅミは嘆きます
一緒に生活できなかった姉妹のふたりですが
今回の絵馬では へびのかたちで仲良く一緒に
父から贈られた酒を楽しみます
コノハナサクヤ は「美しい野村の町」を
イワナガ は 「いつまでも続くこと」を
美(うま)し里が 永久(とわ)に続くことを祈念しています
Hさんのアイデアで 二人に シトラスリボン を付けて 可愛くしました
コロナ渦も忘れてはいけません
画面下の 左の小さい へび は 自分のしっぽをくわえて輪になったウロボロス
始まりも終わりもないことから「完全」「永続」「循環」
右の小さい へび は「巳」の漢字
背景の大きい「虹」は 古代の人たちが 虹と蛇を関連づけていたこと
本校校歌「彩雲(あやぐも)の高照る丘に」もイメージしています
半円に見えますが 実は微妙な楕円で
杯の台の左右の斜線の延長線と 画面の底辺との交点を二つの焦点として
糸を張って苦労しながら作図しています
ちょっと シュールな感じの 絵馬ですが
へびの「再生力」「生命力」で
「 野村が いつまでも 美(うま)し里 で あり続けますように 」との願いを込めています
お正月の期間は 昨年の絵馬も並べて飾ってくださるそうです
昨年は「水害への鎮魂」の絵馬
今年は「水害からの再生」の絵馬
この二つは 連作のつもりで制作しましたから
二つを同時に並べていただけるのは非常にありがたいです
静かな境内で 生徒達の力作を 是非ご覧ください
美術部顧問( 仙波 )