もう いいです 自画像は

2022年6月8日 17時50分

1年生の美術の授業(自画像)

時間をかけて取り組んで来ましたが、ほとんどの講座が終了しました。

制作過程をまとめて紹介します。(長いです)

  

1年生の諸君に、美術で 何がいちばん苦手 か質問すると、多くの子が「自画像」。

小さいときには 無邪気に顔が描けたのに、年齢が上がるとともに 苦手になります。

理由はよくわかります。リアルに描こうとする程、ちょっとカタチがずれると不自然(変)に見えるからです。

人間は、何よりも「人の顔の微妙な違い」が認識できてしまいます。

そうでないと こどもが知らない人について行ってしまいます。

相手の微妙な表情(感情)の変化に気がつけなくなります。

生きていく上で必要な能力です。

ですが人間の顔は、実はどれも似たようなもので、

顔(頭蓋骨)の縦横の比率、目、鼻、口、耳の位置などは、たいして違いはありません。

ただパーツの配置や大きさが微妙に違うだけです。

1年生の最初に、いちばん苦手なものをやっつけます。

 

今回の自画像では、最初に 幾何学模様 を描いていきます。

ポイントは「比率」(黄金比)。

  人間の顔や体は、「実は同じ比率でできている」のじゃないか

ということを 古代ギリシャ人が気が付いて、かの レオナルド・ダ・ヴィンチ先生 も研究しました。

  

  

                 レオナルド・ダ・ヴィンチのデッサン

 

自画像の授業では、最初に線分を半分にする点を探すところから始めます。

半分にする工程を3回繰り返すと3:5のポイントが見つかります。

このポイント(1:1.666,,) が黄金比(1:1.618)とほぼ同じです。

この3:5を使って、鼻や口の位置(高さ)を求めていきます。

                  

今回は、黄金比コンパス(自作)を生徒の人数分用意できたので

自分の 手や顔に潜む 黄金比 を見つけてもらいました。

人体の手の関節の長さの比、目、鼻、口の位置の比など なぜかすべて黄金比です。

 ダ・ヴィンチ先生 が夢中で研究したのが わかる気がします(?)

 ダ・ヴィンチ先生 も比例コンパスを使っていたそうです。

 

  3つの先端のそれぞれの幅の比が黄金比(1:1.618)

 

まず自分の顔を線だけで描いていきます。

2:3の長方形を描いて、半分、3等分、3:5のポイントなどを探しながら、顔のパーツの配置を探していきます。

黄金比コンパスは あくまでも確認用で、自分で鉛筆を定規代わりに使いながら3:5を探します。

同時に、自分の顔を鏡でよく観て、微妙なずれを確認して描きます。(この ずれ が人相の違いで重要)

幾何学的な補助線を、練り消しゴムで消して 画面をすっきりさせて下描きの完成です。

 

   

完成した下描きを、黒い紙にテープでとめ、カーボン紙を挟みます。

下描きを 赤いボールペンでなぞり、黒い紙に写し取ります。

赤色を使うのは、どこをなぞったか分かりやすくするため。

黒い紙にカーボン紙の黒い線なので ちょっと見にくいですが、なんとか判別はできます。

 

  

ここから、明るく見える部分を白いコンテペンシルで白く(明るく)していきます。

 このコンテペンシル、断面が丸いのでよく転がります。

机から落ちると芯が柔らかいのですぐ折れます。

のみならず、木の軸の中の芯までひびが入って、削っても削っても芯が折れているということも・・

今回ひらめきまして、ワインのコルクを 六角ナットの形にしたもの を付けてみました。

今まで、ひどい時は1時間の授業で5回鉛筆が転がり落ちたこともあったのですが

今回はほとんど転がりませんでした。

この発明を 自分では「とまるくん」と呼んでいます 。

 

  

 

自画像(本番)に取りかかる前に、黒い紙に白い鉛筆で描くこと(明るくしていく)を理解してもらいます。

黒い紙にあらかじめ印刷した図形を 白鉛筆で塗っていきます。

まず3段階の明暗をつくり、それをさらに3段階に分け、9段階の明暗をつくります。

画面の中に、真っ白な部分と真っ黒な部分を表現すること、

明暗の違いで立体感が表現できること を理解してもらいます。

毎回、黒い紙に印刷した黒いインクが見えにくくて苦労していたのですが

今回 一人の男の子が 画期的な方法 を発見してくれました。

見えにくい印刷のインクを 練り消しゴムでこすると たちまち見えるように。

これまでの10年間の苦労が嘘のように 一気に解決しました。

 この方法を今後  miyagawa  method として代々伝えていきます。ありがとう A・M 君

 

          

 

白コンテの使い方が理解できたら、鏡を見ながら自画像に明暗を付けていきます。

写真を撮るのを忘れていましたが、最初に目を描きます。

目のハイライトを真っ白にすることで、いちばん明るい部分の基準ができます。

また、顔を描くのではなく、まず目だけ描くことで 心理的なハードルが下がります。

ここからは、教室の片方の暗幕を閉めて、一方向だけから光が当たる状態にします。

なので かなり窓際に移動していますが、換気と席の間隔には注意しています。

目を描いた後、自分の目を細めて、まず明るいところと暗いところを描き分けます。

2段階の明暗に分けたら、それぞれをまた2段階に分けて、4段階の明暗表現にします。

どこで明暗の段階を切り替えるのかが難しいところです。

絶えず目を細めて、鏡の中の顔と画面を同時に見比べながら判断していきます。

あとはひたすら鏡を見つめて、どこが明るい(暗い)のか観察して描き込んでいきます。

白くなりすぎたら練り消しゴムで暗くすればよいのです。

どこまで鏡の中の自分と向き合ったのか が完成度に影響します。

 答えは鏡の中にあり、どう見つけるか が大事です。

  

  

  

  

  

 

 

 

1-3の授業の時にALTのコディ先生が参観に。一緒に自画像を描いてもらいました。

手先が器用でテーブルを作ったり家のリフォームをされるコディ先生

絵は苦手とおっしゃってましたが、絵も達者でした。

  

 

 先日、自画像の授業が終了した1-3の生徒に質問してみました。

「 正直に手を挙げて もう二度と自画像 描きたくない人 」

 全員が手を挙げました。

「じゃあ この自画像が 今までの自分史上 最高の出来 だと思う人」

 これも全員手を挙げてくれました。

ものをつくる人ならわかると思いますが、全力で作り上げた場合

完成の達成感と同時に、もう二度とこんなことはやりたくない と思うものです。

その意味で、今回も全員が全力で自分と向き合ってくれました。

 完成作は後日HPに載せる予定です 文化祭でも展示します。

 1年生のみなさん お疲れ様でした。